【小手先のカメラ技術よりも先に覚えてほしいこと】お母さん、子どもはアナタが笑わせるんですよ。
職業としてのカメラマンになって数年が経ちます。正しくは、専門カメラマンというわけで無く、カメラも扱う編集者としてですが。
過去、お仕事で風俗嬢やホスト・キャバ嬢から、子どもや社長さんなど幅広く色々な方を撮影してきました。
そんな風にカメラマンとして現場に出ているのですが、僕にはどうしても堪えられないことがあります。
先にも書きましたが、お仕事で子どもの写真を撮ることが多々あります。モデルじゃない、いわゆる素人の子どもスナップショットです。
今を生きる子どもは、僕らが小さい頃よりもずっと写真に撮られることに慣れています。それはスマホが普及し、小さい頃から親御さんから事あるごとに撮られているからでしょう。
なので、正直撮る事自体は本当に楽です。こちらが指示しなくても、カメラを向けると自分のベストポーズを勝手にしてくれることも少なくありません。
僕らの子ども時代じゃ考えられません。一昔前は元気よくピースをするか、恥ずかしがって隠れるの二択だった気がします。
なので撮影する側からすれば非常に楽ちんなんですけど、たまに笑顔じゃないのにポーズだけする子どもがいます。ニコリともしないで、ピースをしたり、頬に人差し指を付けるようなポーズだけをするんです。
そんな子どもを見ると心が痛みます。
そういった子どもの親御さんの共通点は「ほらほら、笑って!」と強い命令口調で言ったり、実際に子どもの腕を取って矯正しようとします。自分はカメラを構えて、言葉だけで指示を飛ばすんです。
僕にはこれが悲しいのです。
僕が初めて一眼を握った時に、上司から言われたのは「カメラマンは命令しちゃいけない。撮影対象が自発的に動くように誘導することだ」ということでした。
強要した表情、ポーズというのはひと目でわかります。だから、あくまで自発的に相手が動いてくれる環境づくりこそがカメラマンの最大の仕事と教わりました。そしてカメラマンと働いて数年が経ちますが、この言葉はまさに写真撮影の本質をついていると思うのです。
撮影される側というのは、それが肉親であってもあんがい気を張るものです。子どもにしたらいい迷惑です。事あるたびにカメラを向けられ、笑顔を強要される。小学生の高学年になれば、撮られる楽しさといのも分かるかもしれませんが、それよりも小さい子どもにそれを望むのは酷じゃないでしょうか。
多分、親御さんはきっと善意100%で、良かれと思ってそうしていると思います。その瞬間で、最も子どもが栄えるポーズをさせたいという気持ちも理解できます。
けれども、
笑ってじゃないだろ!
お前が笑わせるんだよ!
子どもが手を振るだけで笑うと思うな!
動け!上半身をコミカルに左右に振るくらいの努力をしろ!
恥ずかしい?人が多い中でじっと立ってる子どものほうが恥ずかしいわ!
(腕や足を無理やり動かして)こうするのよ、じゃねーよ!お前がお手本として実際に動け!
お前がまずポーズをとれ!
自分の子どもだからって楽しようとすんな!!!
と思ってしまうのですね。
特に、そういった傾向はお母さんに見られます。
自分がお腹を痛めた子どもだからって楽しようとしていませんか。分かってくれると思ってませんか。
分かりませんよ。子どもですもん。
親というのは子どもにとって絶対の存在です。どんな無茶でも知らず知らずに従ってしまうものなんです。それを分かってあげて下さい。
仲の良い友人に同じことをしてみて下さい。きっと怒ります。そして現実では、友人同士ならそういった努力は皆さんしているはずです。
でも、自分の子どもになると途端に忘れるんです。
笑って、と指示を出すだけではいけません。僕らだって、笑って下さいと言われてとびっきりの笑顔を出すのは難しいです。
そんな時は、言葉で、言動で、あるいは子どもが好きなものを見せてあげて、まず緊張をほぐすというワンアクションを挟んでほしいと思うのです。
撮影をしていない人は、最初から一人だけで撮らないように、まず両親のどちらと撮影をしてから安心させてから、初めて子ども一人で撮るという方法も一つの手です。
これは僕の考えすぎでしょうか。笑顔のない子どもは、緊張しているから・知らない三十路のおっちゃんだから笑ってくれないのでしょうか。確かにそれもあります。それを自然に笑わせてシャッターを切るのが僕らの仕事ですから。
けれども、じゃあ何故ポーズだけはとるのでしょうか。それは親が強要しているから、そうしないと怒られると子ども心に知っているからではないでしょうか。
写真を撮るという行為が簡易になった現代だからこそ、撮る側も最大限に配慮を考えなければならないではないでしょうか。
願わくば、独りよがりでない写真が世の中に広がればと思います。
それでは、また。餅夫でした。